ニューヨーク、折り返し地点


 ルイジアナ州のニューオーリーンズで夜遊びをした後、帰国の日にちが迫ってきたヒロ君は、僕達に別れを告げ、グレイハウンドのバスに乗り、西海岸へ帰っていった。僕とユウスケは引き続き東海岸に向かい旅を続ける。この頃、レンタカーの乗り捨て料金のことが話題に上っていた。ニューヨークからヨーロッパに飛び、地球を一周するつもりだった僕の計画では、ロスで借りた車はニューヨークで乗り捨てするつもりでいた。ところがユウスケは、その際に支払う乗り捨て料金が高く、払いたくないと言い出した。結局僕は彼に説得され、ニューヨーク滞在の後、大陸をもう一度突っ切ってロスに戻ることに同意した。この男と出会って、レンタカーを借りたことが、僕の旅行ルートを根本的に変えることになってしまった。
 フロリダ州のデイトナ・ビーチでさんざん夜遊びをした後、東海岸を北に向かう。ワシントンDCを過ぎていよいよニューヨーク入りだ。ロスを発って二週間経っていた。途中日本の実家に電話した時に、「ニューヨークだけは気をつけとけよ」と父に言われたことがおもしろい。それだけ、日本では危ないところだという印象があるようだ。
 安宿をとり、一週間の滞在に。一応の観光もしたが(今は無きツインタワーも上っている)、ユウスケとは別に一人で知り合いや日本から住所をもらっている人に会いに行くことにした。京都教育大学の同級生のミワコさんは当時ニューヨーク大学に留学して版画を専攻していた。彼女と落ち合い、一緒に日本の先生から紹介してもらっていた、マンハッタン在住のアーティスト、キムラ・リサさんに会いに行った。ロフトを使ったアトリエに他のアーティストたちもやって来て、飲み会になった。赤一点のミワコさんは人気が出て、すっかりくつろいでいたが、僕はなぜかとけ込めず、ミワコさんがうらやましかった。旅行者として素通りしているだけの僕に対して、そこで生活しているミワコさんがたくましく見えた。(彼女はその後ニューヨーク大学の同僚のアメリカ人と結婚して家庭を持ち、ニューヨークに残ることになる。)
 貧乏旅行をしている僕とユウスケは特にショッピングやミュージカルに行くわけでもなかったので、ニューヨークはそんなに楽しめるところではなかった。ユウスケと、危険とされているハーレムを歩いたりしたが、表面的なものしか見えない旅行者であることに、疲れてきていた。マンハッタンのアートギャラリーも色々廻ったが、どうも理解できる作品に出会わず、おもしろくなかった。ただ、当時人気のあったGilbert & Georgeに偶然出会い、サインをもらったのはラッキーだったが。
 一旦ユウスケとロスにレンタカーを返しにもどるにしても、その後、ニューヨークに一人で帰ってきてヨーロッパに飛ぶつもりだった。そこで、この滞在中に旅行代理店でフィンランド行きの切符を予約して、デポジットを100ドル払っている(フィンランドの版画工房を訪れるという当初の計画があった)。しかし、この100ドルはその後結局無駄になることになる。




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