テキサスのエキサイティングな夕べ


ユウスケ、トオル、ヒロ、そして白いカローラ

 アリゾナの雄大で奇怪な大自然を見た後、僕達三人は南の州を中心に走りながら東海岸に向かう。小さなボックスは広い広い大地をただまっすぐに走る。
 南の大きな州、カウボーイの文化が根強いテキサスにやってきた。フォート・ワースはその中でも特にカウボーイ色が残っている町で、 ケネディ大統領が暗殺されたダラスの西手前三時間ほどのところにある。僕達はこの町に夕方近くに着き、カウボーイ・ブーツの店などを物色していた。 ヒロ君はマカロニ・ウエスタンの世界にかなりはまっていて、限られた予算の中、ほしいものを買おうと一生懸命だった。フォート・ワースの人々の印象はというと、やはり金髪青い目の白人が多い。こんなに暑い州に不適当という気もするが。
 日はとっぷりと暮れていた。僕達は西部劇に出てきそうな古い木造の町並を歩いていた。地元のクラブにでも行こうとしていたところだった。 突然、数人以上の警察官に囲まれ、銃を向けられホールド・アップを喰らってしまった!!僕とユウスケは抵抗せずに壁に手を着き、警官達のなすがままにボディ・チェックを受けるはめになった。不思議と恐怖はなかった。 ヒロ君は抵抗を見せてしまったので、警官ともめていたようだ。彼は髭をはやしていたためか、メキシコ人と思われ、スペイン語で話しかけられていた。パスポートを提示させられ、暗闇の中フラッシュ・ライトに照らし出された日本のパスポートから僕達が日本人旅行者だとわかると、僕達を解いて警官が事情を話だした。一ヶ月程前に白いコンパクト・カーに乗った東洋人三人組が強盗を働いて逃げたのだという。つまり僕達を見た誰かが通報して、それから警官につけられていたことになる。確かに僕達は白いカローラに乗った東洋人三人組ではあるが…。後で三人で話している時に、「西部らしい出来事で嬉しかった」などと悠長なことを言っていたが、今思えば、下手に抵抗していたら、どうなっていたかわからない。ユウスケによると、ひとりの警官なんかはショット・ガンの重厚をこちらに向け、ロックをはずす音がしていたそうな。
 その後、僕達は無事、クラブに入った。ビールを飲んで踊っていると、メキシコ系アメリカ人っぽいやつが僕に向かって何か怒鳴っていた。よくわからないので無視して踊り続けていると、ビール瓶を僕に向けて投げたのだ。ビールが僕の肩から頬にほとばしる。僕はなんと言って反応して良いのかわからず、とりあえず、Splash(バシャッ)なんて言葉を相手に返してたが。しかしつまりは「よそ者は出ていけ!」ということなのだ。相手が周りの連中に押さえられたからよかったものの、喧嘩になっていたかも知れなかった。
 一晩にこのようなことが二度もあると、さすがにテキサスのこの町の印象は強い。ベイエリアに住んでいると、このようなこととは縁がないが、これが本当のアメリカなのだ、と思われる。白人中心の排他的な社会。東洋人をみれば、特別視する。白人以外は入り込みにくい。しかし、このビールをかけた男もメキシコ系で、テキサスではマイノリティ(少数派)なのである。完全に同等とみなされない人種のディフェンス・メカニズムだったのか…。




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