エクアドルは南米アンデス諸国では1番小さな国だが、六千メートル級の雪山からジャングルまでを抱えるユニークな国。高山の上にある首都キトからもバスで一日のところにアマゾン源流ぞいの町があるなんて具合で、その上物価も安いのでこの国で南米アマゾンを体験することにした。バーニョス温泉街滞在の後、いよいよミサワジという小さな村を訪れる。途中で会ったドイツ人カップルとともに、噂に聞いていたルイスというジャングルのガイドを探す。彼は実際ジャングル原住民出身でかなり詳しいという。彼にはすぐに会えたが、ジャングル・ツアーを組むには数人旅行者が集まることが必要だった。その夕方、同じくツアー結成のため一週間もそこで他の旅行者を待っていたスイス人カップルと統合した。そこにさらに丁度イギリス人、アメリカ人、ドイツ人もう一カップルやってきて、ツアーグループが結成された。
グループは隣の大きな町コカへ移動し材料を仕入れると、そこからアマゾン支流ナポ川をボートで行く一週間の旅に。ルイス氏と九人の旅行者の他に船頭さんと調理人を乗せて。風景はしだやつるが垂れ下がりうっそうとしてくるが不思議とそんなに暑くない。水から亀が顔を出し、珍しい鳥が飛んでいる。毎日ボートを進めて適当な岸を見つけて、そこでテントを張る。そこからジャングルをトレッキングしたり釣りををしたりののんびりした毎日。薬草や色々な珍しい植物なども教えてもらう。ヤシの葉を編んでサンルーフを作ったり、大きなつるにつかまってターザンごっこなんてのもやった。一度危険だなと思ったのは、猛毒を持った蛇を見つけてルイス氏が慌ててつかまえてくれたとき。それに噛まれるといちころだったらしい。
食事は、小麦粉や油は舟に乗せているが、他は魚を釣ったり果物を獲ってきて作る。釣ったピラニアも食べた。そんなにおいしい魚ではなかったけれども。このガイドらは本当に手慣れたもので、野鳥を狩猟して食べたこともあった。(ワニも捕えたがこれは川に返している。)調理人は毎回満足のいく食事を作ってくれた。ガイドの三人共がなかなかのエンターテイナーで、毎日愉快なジョークが飛び交う。ジャングルの原住民の居住区はまだまだ奥地にあったらしいが、一度モーターボートで荷物を運んでいるのと擦れ違った(町に買い出しにでも行ったのか、彼等も文明から孤立しているわけではない。)。
最後の夜、こんなことがあった。雨が降って川の水かさが増していたのだがそのまま皆寝ていた。僕は深夜ふと目が覚めて気付くと、川があふれて一番端に寝ていた僕のところに丁度さしかかる寸前だったのだ。慌てて跳ね起き、他のみんなをたたき起こしてボートへ避難した。キャンプしていた岸は完全に水にさらわれてしまった。何が起こるかわからないジャングルだが、直前に目が覚めた僕自信にも驚いた。
翌日も雨は止まなかったが、ボートは帰路コカへ。途中船頭が何かを見つけてボートを岸につけた。なんと四〜五メートルもあるアナコンダが川岸にいた。しかもワニを食べた後らしくお腹を大きくしている。船頭は大胆にもこのアナコンダの尻尾をつかみ、川から引きずり出した。満腹の蛇はおとなしいものだが、さすがに食後のくつろぎをじゃまされて口を開いて怒りを示している。僕たちはおののきながらもシヤッターを切った。大アナコンダは最後には大きなお腹を抱えて泳いで逃げていった(なんかこれではゴジラシリーズの毎度の最後のシーンみたい)。ガイドの話だとジャングルにはこれよりもさらに大きいのがいて時々人間さえもすがたを消すという。なにしろジャングル・ツアー中、最もワイルドな一瞬だった。
とにかく僕たちは無事にコカの町にもどってきてその晩にぎやかに打ち上げをやった。ガイドと船頭たちも、外国人からまとまった金が稼げて、酒を飲んでいた。どのくらいに一度こういう機会が彼らにあるのだろう。